感覚をつないでひらく芸術教育を考える会
第12回 研究発表会



ワークショップの光景


2018年3月18日(日) 
兵庫教育大学 神戸ハーバーランドキャンパス 兵教ホール


 第12回 感覚をつないでひらく芸術教育を考える会 研究発表会が,兵庫教育大学 神戸ハーバーランドキャンパスの兵教ホールで開催されました。

 今回の研究会の司会・進行は、光徳幼稚園園長・椋田敏史先生です。

 オープニングの基調提案は兵庫教育大学の 初田隆 先生です。


 テーマは感覚横断的な表現に関してです。ある感覚で捉えた印象が、他の感覚では、どのように表現するか?その表現を他者と共有することができるか?


 シートを用いて・・・視覚で、@星型、A円、B三角形・・・と捉えたものを他の感覚・・・聴覚や、味覚、嗅覚、触覚で表現するとどうなるか・・・

 また、聴覚で@G線上のアリア、A木星、B君が代・・・と捉えた感覚を、他の感覚で表現するとどうなるか・・・


 参加者がそれぞれシートに記入して、1人の参加者の「感覚横断的な表現」に触れて、元となる感覚の部分を予想・共有するというものです。


 参加者が、シートに記入した「感覚横断的な表現」を発表して、それに対して、他の参加者が、元の感覚の部分がいったい何だったのかを考えました。


 聴覚に関しては、兵庫教育大学の 木下千代 先生が、歌の一節をくちずさんで、他の感覚をどのように表現するか・・・会場全体で共有しました。




 基調提案に続いてワークショップ,最初は、京都市立芸術大学音楽学部准教授で作曲家である岡田加津子先生による「「楽器を使わないで音楽しよう!」です。木下千代先生からの講師紹介です。


 さっそく参加者全体が大きなひとつの輪になって、ワークショップのかじまりです。


 ワークショップの趣旨の説明を、もっとも若い参加者が、熱心に聞いていました。


 最初は、約1秒の間隔で「舌打ち」をするリズムで、そのリズムを輪の中で隣に次々に伝えていきました。

 続いて手拍子・タッタッタッ、タッタッタッ・・・と、これも約1秒ごとのリズムを次々に隣に伝えて、輪の中をリズムが受け継いでいくものです。


 次は、肩をパタパタパタ、パタパタパタ・・・このリズムが、輪の中を掛け巡っていきました。


 波動のように、隣からの空気の圧力・エネルギーを隣からもらって、パタパタパタ、パタパタパタ・・・と次々に受け継がれていきました。


 その次は、「舌打ち」、「手拍子」、「肩をパタパタパタ」と3つのパターンが、輪の中を巡っていきました。


 その次は4つのパターン、トントン、パタパタ、タッタッ、パタパタ・・・


 その次の5つは、5文字の言葉を次々に口にして、タッタッタッタッタッとリズムが受け継いでいきます。

 オムライス、コシヒカリ、ありがとう、青りんご、こんにちわ、マスカット・・・


 更に、膝を叩いてリズムをとって・・・


 岡田加津子先生は両足の足首に、それぞれ違った鈴をつけて、だんだんパターンが複雑になるリズムがわかりやすくなるようにして、ワークショップは進みます。


 舌打ち、拍手、肩、膝と、身体の各部位を叩いたリズムのバリエーションを変えて、だんだん複雑になります。


 単調なリズムだったのが、だんだんリズムが複雑になって、参加者の輪を駆け巡る波動が、リズミカルに伝わっていきます。


 時々、リズムに乗れずに・・・岡田加津子先生から「通り過ぎても気にしないように」と、和やか雰囲気の中で、輪の中をリズムの波動が伝わっていきます。


 最後は、輪を半分に分けて、互いに異なる身体で奏でるリズムを、2つの向かい合ったグループがセッションするような感じでの、リズムのやりとりです。


 互いに、それぞれの身体の各部位でリズムをとって、2つのグループがリズムのやりとりです。


 各参加者のボディー・パーカッションの奏でるリズムが、大きな輪の中で波動のようになる感じがしました。




 ワークショップに続いて研究発表です。

 神戸市立渦が森小学校の峯松香織先生による、「身体の感覚に着目した造形活動」というタイトルの発表です。

 特別支援学級における図工の授業において、パニックになる子ども、すぐに飽きる子ども、何をして良いかわからない子どもについての取り組みを行い、その取り組みの成果を、今回は通常学級に適用した実践研究です。


 研究の動機として、 図工は造形活動であり、本来は、自由に表現できる楽しい授業であるはずなのに、自信なさげに取り組んでいる児童がいることが気になったそうです。。

 図工における、「イメージしたものをつくろう」、「見て、そっくりに描こう」、「感じたことを表そう」、「自分で考えてつくろう」という授業の内容の中には、発達障害の児童にとって苦手な活動が含まれています。

 ほんとうは支援が必要なのにもかかわらず、もし配慮がなされなければ・・・パニックになる児童、すぐに飽きる児童、何をしていいかわからない児童が少なからずいるそうで、そのような児童にとっては、楽しいはずの造形活動が、残念ながら苦手な活動となってしまいます。そこで苦手意識をやわらげ、児童が進んで表現できるような授業展開の仕組みが児童には必要だと、問題意識を持ったとのことです。


 今回の研究発表では、この特別支援学級における取り組みの成果である『身体活動を取り入れた造形活動、更にそれを取り入れるためのアセスメントの活動』を通常学級の学習の中で取り入れて、支援が必要な子どもを把握して、それを基に学級全体の取り組み・テーマを考えたという実践的な研究成果の発表でした。


 続いての研究発表は、「音楽・美術連携教育に向けての試み『音・色 ねいろプロジェクト』より“表現トレーニング”」です。

 京都市立芸術大学プロジェクトチームの川嶋渉先生(日本画専攻准教授)、舟越一郎先生(ビジュアルデザイン専攻准教授)、岡田加津子先生(作曲専攻准教授)で、発表は岡田先生です。


 音楽・美術連携の授業において、音楽を聴きながら絵を描き連ねる(時系列的な音楽の絵巻物)、音楽を聴いて、その印象を一枚の絵に描く、反対に絵を見て楽器の演奏や声楽によって表現するという試みの実践報告でした。


 実際の“表現トレーニング”のビデオ映像の紹介がありました。










 共同研究者でビジュアルデザイン専攻の舟越先生からのコメントもありました。




 研究発表の後は、兵庫教育大学大学院生によるパフォーマンス発表です。

 最初は『変身』です。林真由さん、中岡郁恵さん、稲岡敦子さん、菅原綾香さん、延安優希さん、中村賢太さん


 ホッチギスのようなもので、いろいろなものを呑み込んで・・・


 映像にあわせて、いろいろなモノを使って、音を出して・・・


 最後は、モノだけではなくて、人も呑み込まれて・・・


 黒い中を蠢いて・・・


 そして、変身




 2番目のパフォーマンスは『大事なこと』です。西永円さん、芹生美里さん、能勢りかさん、池田直美さん、(鈴木雪絵さん)、(秋藤眞鈴さん)


 足を使って、ゆったりとした動き・・・

 それにあわせて、サイドでは演奏・・・


 だんだん増えて・・・






 うばい 合えば 足らぬ

 わけ合えば あまる

 みつを


 大事なこと


最後のパフォーマンスは『夢』です。柳内彰子さん、菅原綾香さん、芹野麗さん、三ア靖子さん、八木祐貴さん、棚治崇さん、(古家美和さん)

 白い服の人が起きている時は、黒い服の人達は眠っています。


白い服の人が眠りにつくと・・・


黒い服の人達は眠りから目覚めて、起き上がります。

 夢の世界・・・
















 そして夢のクライマックス・・・


 白い服の人が目覚めて・・・周囲では、黒い服の人達が眠りについています。


 パフォーマンス発表の後に、それぞれのチームからのコメントがありました。






 そして質疑応答、感想等の意見交換が続きました。


 恒例となった奥忍 先生による講評です。


 身振り手振りを交えて、研究発表やワークショップについて,端的で的確な評をされ,素敵な感想をコメントされておられました。


 全プログラムが終了して,事務局の兵庫大学の 井上朋子 先生よりの事務連絡があり、閉会となりました。


 会場は、兵庫教育大学の 神戸ハーバーランドキャンパスにある兵教ホールです。


 神戸ハーバーランドキャンパスは、ハーバーランドぼ神戸情報文化ビルの3階になります。


 最寄り駅は、JR神戸線の神戸駅です。東京を始点とする東海道本線の終点の駅であり、神戸駅を始点とする山陽本線が、関門海峡を越えて北九州市の門司駅までつないでいます。