課題研究発表会


SSH課題研究発表会、2016年02月03日


 勤務校の近隣にある高校でのSSH課題研究発表会に参加しました.

 神戸の市街地の山手にある高校まで,浜手の勤務校からは坂を上ることになります.途中に王子動物園の前を通りました.今日は休園でした.


 阪急・王子公園駅の北側からの坂道をまっすぐ上って突き当りの背後の摩耶山の麓まで・・・


勤務校から約30分で校門の前に到着です.


 現在は全日制課程の一校だけがこの敷地にありますが,旧制夜間中学と,旧制夜間女学校が,それぞれ戦後の学制改革で新制の定時制高校となった後すぐに両校は統合するのですが,12年前に廃校となって・・・この石碑が敷地に残っています.


 会場の講堂に到着する頃には汗だくになって,2〜3分タオルで汗をぬぐって,やっと落ち着きました.受付後,全体会の開会まではポスターセッションで,8テーマについて個別に説明を受けることができます.


 一部の保護者の方は会場に到着していましたが,まだ受付を済ました参加者は少なく,生徒たちは保護者の方々に丁寧に説明をしていました.


 ポスターの前に生徒たちは立っていますが,その後,講堂の壇上からのポスターセッションでのプレゼンテーションに備えて練習しているようでした.


 開会式が近づくと,参加者の方々も受付を済ませて彼方此方で熱心な説明が始まりました.私も多くのポスターセッションで説明を受けるつもりだったのですが,丁寧に説明をして,それに対して突っ込んで聞いていると,2つのテーマで20分以上経過してしまい,結局3つのテーマだけでした.


 参加者には,このような評価シートが配られます.各テーマに関して,様々な観点から5段階での評価が求められています.


 開会の最初は校長の挨拶です.


 その後,総合理工学科から,SSH事業の概要説明がありました.入学後すぐ,1年生の段階で「プレ課題研究」を行って10グループに分かれて11月には中間発表もしているようです.その後,実際に課題研究をしている2年生の研究室を訪問して,最後は英語でのポスター発表をして,その後,2年生の課題研究に関して,希望調査というスケジュールです.


 2年生の課題研究では,テーマ設定,グループ研究,,中間発表会,そして最終の論文とポスターの作成となり,その後,3年生でも継続して学会等校外で発表する道も準備されているようです.


 数年前に課題研究の中間発表に参加したことがありますが,その時は2年生と外部の参加者で,2年生は半分に分けて,同じクラスのポスター発表を聞いて質問するスタイルでした.現在は3年生が参加して先輩からの指摘を受けるタイプになって,試行錯誤しながら課題研究の「在り方」を模索し続けているように思います.


 生徒のオーラルセッション・・・1番目は「立方体東映の世界地図」です.昨年度に「円柱アナモルフォーズ」がテーマにありましたので,その継続のような感じです.投影と変換を用いた数学(幾何,ベクトル)をベースにしたテーマです.


 2番目は「LEDを用いた細胞性粘菌の走行性」です.単細胞期と多細胞期を繰り返す生物で,単細胞期を経て,単細胞が集まる集合体となったときに,走行性によって動くそうで,走行性は波長には関係ないとの先行研究があるのですが,波長と走行性に関係があるとの研究仮説のもと,実験で検証して波長と走行性との関係についての発表でした.


 今まで何回か課題研究発表会に参加しているのですが,これまではアドバイザー等外部からの参加者からの質問が多く,生徒からの質問が少なかったのに対して,今年は生徒の質問が多かったのが印象的です.


 3番目は「メトロノームの同期現象」です.2つのメトロノームを自由に動く台の上で動作させると,位相が同期することをシミュレーションと実際の実験で確認するテーマです.


 実際に同期する様子を再現していました.ポスターセッションで質問したのですが,「角速度がわずかに異なる場合はどうなるか?」の問いに対して,文献では2つの角速度のちょうど平均の角速度となって位相も同期するそうです.しっかりと文献のリサーチもしていました.


 前半最後,4番目は「系外惑星TrES-2BのTransit観測」です.最近,NHKの番組「コズミック フロント」でTransit観測による系外惑星を取り扱っていたのを観たので,研究内容がわかりやすかったです.恒星TrESの惑星TrES-2BをTransit観測して,先行研究のデータと併せて,軌道傾斜角が変化し続けている可能性が低いと結論づけていました.他の惑星による影響がみられなかったようです.


 後半には4つの発表がありますが,前半と後半の間に休憩.その間にポスターセッションのプレゼンテーションがあります.生徒は休憩にはなりません.


 参加者も増えて,各ポスターの前では活発に説明しています.


 前半でオーラルの説明が終わったテーマに関して,鋭く質問している姿もありました.


 前半と後半の間の休憩中は,説明を受けるというよりも,質問に生徒が答える感じの質疑応答が多かったように思います.


 参加者の大学の先生方は、かなり突っ込んだ質問や助言をしていました。


 前半で説明が終わったテーマに関しては,ちょっとリラックスした感じで対応していました.


 後半,5番目は「地衣類に含まれる抗菌物質の同定」,これは昨年度からの継続テーマです.昨年は地衣類に抗菌物質を生成することを明らかにしましたが,今年度は,その抗菌物質の同定がテーマです.


 6番目は「クロレラの脂質生産と光環境条件」です.クロレラはストレスを受けると脂質を生産するようですが,明暗の切り替えのパターンを変えることによって脂質生産効率の変化を観察するテーマです.


 生徒からの質問、実験結果のグラフに関して、納得できなかったのか、もう一度説明を求めていました。この質問のお蔭で、私も勘違いしていたことに気付きました。


 7番目は「植物の成長と音」です.カイワレ大根の成長に音が与える影響を調べるテーマで,音の波長を変えてカイワレ大根の成長を観察して結果を導いていました.


 このテーマは生徒からの質問が多く,1年生,2年生が次々に質問していました.


 最後,8番目は「プラナリアの記憶はどこにあるか?」です.プラナリアは切断して再生される性質を持っており,学習をさせた後に頭部を切断して,再生した個体に記憶が残っているかを実験したテーマです.


 学習として電気的な刺激を与えると身体が縮まるという条件付け(学習)を用いていました.身体が縮まることを生徒が実演していました.


 講評では,プレゼンテーションの中身よりも,生徒からの質問に関するものが多かったように思います.昨年までに比べて生徒からの質問が増えたことに対するプラスの部分とともに,質問を投げかけるだけのケースが多くて,納得していないままに引き下がって「ありがとうございました」と締めくくっていることに対して,「もっと食らいついて納得できる回答を引き出すことも大切」というニュアンスのアドバイスがありました.確かにあっさりした感じで質疑が続くので,その質疑の様子を聞いていても,ちょっと物足りなかったです.

 男子だけが3チーム,女子だけが2チームあり,ちょっと偏りを感じましたが,それもクラスのキャラクターかもしれません.生徒に聞くと,1年生のときの担任は,今年は海外の日本人学校の教師となっているとのことです.

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 課題研究発表会があった講堂がある講堂棟です.


 本館の保存棟部分,神戸一中時代の昭和13年に竣工した正面玄関部分,古き良き時代の名残を感じます。