教員免許更新講習


星槎大学_教員免許更新講習_大坂・心斎橋、2015年03月26日〜03月30日


 何年か前にBS放送で見たフォークソンググループ「赤い鳥」から「ハイファイセット」を経て,現在はソロで活躍している山本潤子(旧姓・新居潤子)を特集した音楽番組の中で,オフコースの小田和正のインタビューに答えた内容が印象的で,今でも鮮明に覚えています。

 ヤマハ・ライト・ミュージック・コンテストに参加した赤い鳥は,「竹田の子守唄」で演奏やコーラスと共にステージの上の動きに至るまで練習を重ねて完璧に練り上げてグランプリを獲得し,そして翌年にはメジャーデビューを果たしたのですが,同じコンテストに参加した小田和正は…赤い鳥のステージを見て「負けた」と感じたそうです。

 「・・・彼らは,このコンテストに勝つために練習を重ねて参加して,このコンテストを踏み台にして飛躍する明確なヴィジョンを持っていたように感じた。それに対して私は,学生時代に愉しんだ音楽に対してピリオドにする思いで,卒業後は音楽から離れて就職するための記念として・・・でも最後を飾るような意気込みがあったわけではなくて,軽い気持ちで参加した・・・」

 「・・・彼らのステージを見て素直に負けたと感じた。そして記念に参加した自分を振り返って考えた。自分にとって音楽とは・・・?彼らのステージを目の当りにして,このまま音楽から離れて良いのか考えて,やっぱり悔しくて,そしてもう一度挑戦しようと・・・」


  ・・・以上のテレビ番組の内容を,教員免許更新講習を終えて,ふと思い出しました。


  


 星槎大学は神奈川・箱根に本部を置く通信制の大学で,10年程前に設立された新しい大学です。北海道から福岡まで常設のスクーリング会場を持ち,教員免許更新講習は,交通の便が良い処にある大きな会場を借りて開催しているようです。今回参加した教員免許更新講習は,心斎橋のレンタルスペースで開催され,選択領域の18時間(3日間)と必修領域の12時間(2日間)とも約200人の受講者でした。年度末のこの時期に教員免許更新講習を開催している大学が稀なので,関西周辺だけではなくて,私がお話しした範囲だけでも,北は宮城県から西は山口県まで泊まり込みで受講しておられる方々も少なくないようです。

 初日,大阪駅から御堂筋を歩いて心斎橋まで,朝9時に講習が開始で,受付が8時20分開始,その8時20分のちょっと前に会場に到着して,まだ受付の準備が出来ていないかなあ〜とエレベータで3階のドアが開くと・・・豈図らんや,廊下には長蛇の待ち行列が続いていました。受付が一人で,個々に本人確認を行っていました。

 講習開始10前からオリエンテーションが始まるのですが,ほぼ30分掛けて受付をしていました。


 3月中旬に教員免許更新講習の情報を収集している中で,申し込み期限が既に過ぎて「ダメモト」で電話すると「キャンセルが出て空きが1つあります」と言われて急遽申し込んだ経緯があり,有名ではない星槎大学という私立大学に関して,大学名も覚えられないままに,慌ただしく講習申し込みをした経緯があり,講習内容には,まったくと言っていいほど期待せぬままの参加でした。

 それが,良い意味で期待を裏切られました。

*

[世界の教育事情〜選択領域 1日目]

 最初は,複数の教員で担当する選択領域18時間(朝夕6時間,集中講義方式の3日間)全体をコーディネートした,元ジャーナリストで星槎大学准教授の天野先生がオープニングで全体の説明の代わりに冒頭からアイスブレーク・・・
 周囲の受講者3〜4人であいさつ代わりのゲーム「ハイドン」で,ノンバーバルなコミュニケーションをした後,やっと講習内容の説明に入りました。その中で選択領域の講習では「KJ法もどき」を取り入れている旨の説明があり,ポストイットが受講者に配られました。

 その時,1人の受講者から「KJ法って何ですか?」という質問があり,天野先生は急遽「それでは,手許のポストイットにKJ法の名前の由来を書いて,周囲の受講者3〜4人で,それぞれ自己紹介をした後に各自の『KJ法の名前の由来』の回答を出し合って下さい」と,グループ討議の場を設けました。

 私のグループは,山口県の私立高の理科の先生,教諭ではない立場で特別支援のコーディネータをされている方,元ITコンサルトの仕事をして現在は大学のキャリアセンターでカウンセラーをされている方と私の4人でした。

 ノンバーバルなアイスブレークの後に(バーバルな)グループ討議を入れて,受講者が周囲と話しやすくするための雰囲気づくり,前座の役目を「そつ」なくこなしたように感じました。

*

 オープニング&ウォーミングアップの後は,休憩を挟んで『音楽「は」関わり合い』というタイトルで,星槎大学で非常勤講師をされておられる安久津太一先生の講習でした.

 安久津先生は高校時代にオーケストラとの出会いを切っ掛けとして演奏家を志して東京芸大のバイオリン選考を修了後,ニューヨークフィルのコンサートマスターをしてるGlenn Dicterowにバイオリンを師事して,米国でも大学院でバイオリン専攻を修了,カーネギーホールで,私の大好きなヨーヨーマとの共演もされたそうです.M・T・トーマス指揮のニューワールド交響楽団で首席奏者もされたそうです.

 演奏家として渡米したのですが,在米中にバイオリンの個人指導や音楽教育に触れる中で音楽教育の道を歩み始めたそうで,マンハッタンの公立学校やハーレムの幼稚園でバイオリンの授業を担当するようになり,その後,コロンビア大学のカストデロ先生の幼児音楽教育に触発されて,ニューヨーク市立大で音楽教育専攻(M.A.)を修了したという経歴をお持ちです.安久津先生の講習を受けて興味を持ち,研究業績を検索したのですが,在米中の英文の論文ばかりがヒットしました.現在は東京学芸大学の連合大学院のドクターコースに在籍され,星槎大学で非常勤講師をされておられるようです.


 講習での安久津先生のお話は,バイオリンを幼児や児童に教えるときに,楽器に触れたり演奏の練習や音楽の鑑賞を通して,"complete sentense"(言葉をきっちり教える)ことを心掛けているとのこと.音楽の演奏技法だけに特化すると"Intrapersonal"(内省的)な傾向になりますが,「多重認知論」の立場から,言語や絵画との関連性を視野に入れて"Interpersonal"(対人的)な音楽の演奏や愉しみ方を志向する・・・アメリカには指揮者のいない「オルフェウス室内管弦楽団」というオーケストラがあり,指揮者の姿がないオーケストラの演奏は,創造的で刺激的であり,ひとりひとりの演奏家たちが指揮者の「独裁」から逃亡して,活き活きとした音を奏でているそうです.この方法をオルフェウス・プロセスというそうです.



 コロンビア大学のカストデロ先生の逸話が印象的でした.


 ・・・ある幼稚園で,幼児各々が配られた楽器を手に取って,勝手に音を出して愉しんでいたそうです.ピアノは蓋が閉められて,幼児が触らないようにしていたのですが,ひとりの幼児が勝手にピアノの蓋を開けてしまって,鍵盤を叩いて音を出したそうです.周りに幼稚園の先生や保護者が見守っており,安久津先生も,勝手にピアノを触った幼児を叱ろうとしたそうですが,そこでカストデロ先生が,突然演奏を始めたそうです.

 それまで幼児各々が,勝手に自分が手にした楽器をガチャガチャと音を出していたのですが,次第にカストデロ先生の演奏に合わせるように音を出すようなって,そして,カストデロ先生の「伴奏」に併せて演奏するように自然に導かれたそうです.

 おそらく,安久津先生が演奏家ら音楽教育へと大きく歩む道を転換するようになった「ターニング・ポイント」となった出来事のひとつではないかと思いますが,私も自分の研究テーマである「センス」の視点から,興味深く,このカストデロ先生の逸話を耳にしました.



 お昼休みに入る前にヴィヴァルディの四季の「春」の部分で,安久津先生がバイオリンで旋律を演奏後,「小鳥のさえずり」の部分を受講者がグループごとに8音節づつ各自が「小鳥を奏でる」というワークショップでした.各グループとも,それぞれが工夫して8音節の間「小鳥」を身体表現や音を用いて顕していました.  



 1日目の午後は「学習指導要領 分数」をテーマにした星槎大学準教授の伊藤一美先生の講習でした.専門は発達障害や学習支援,そして今回の講習の内容と関係が深い「認知心理学からみた教科理解」や計算障害です.

 講習の冒頭に「人はなぜ計算ができるようになったか?」という話で,動物は本能として「大きな獲物」を選んでいるので,大きさの比較は原初的なもの・・・というような話から始まりました.

 「筆算」は頑張れば出来るが,「分数」はできない子どももあり,小学校で「分数」が大きな壁となっているのが現状で,以前は4年生から分数が導入されていたのが,現在は2年生で分数が導入され,分数の計算は3年生から・・・これは,ちょっと早いのではないかという議論もあるそうです.


分数は,

分数の「概念」の多様性
分数の「意味」の多様性
分数の「表記」の多様性

 この3要素に加えて分数の計算手続きの煩雑さや多様性がむつかしいことも分数が苦手な子どもの要因・・・小学校での問題意識を知ることが出来ました.

 今,自動車のガソリンタンクの残量を示すメーターが読めない大学生もいるそうで,これはまさに「残量が半分,残量が5分の1」という分数の概念や意味,表記の「認知」に関わる問題なのかもしれません.

 講習の最後に,「多様な学びの場」としての「インクルーシブ教育」 … 「発達」は,みんな違うルートを通るという捉え方をして,”普通を目指す”という意味での"Normalization"を主張することは,今から考えれば「普通ー異常(特殊)」という二元論の立場の用語・語彙で葬り去るべきだという内容でした.



 1日目の午後,休憩を挟んで2つ目の講習は「Bhutanの教育」をテーマにした星槎大学講師の渋谷聡先生の講習でした.星槎大学は,日本で唯一の通信教育で保健体育の教員免許が取得可能・・・という宣伝から講習が始まりました.


  世界の教育を取り上げる中で,なぜブータンなのか・・・ということですが,星槎大学の創設者である宮澤保夫がアマチュア無線を通してブータン国王と親交があり,その縁でブータンに私立大学を創設するときに協力をした関係で,ロイヤルディンプーカレッジと姉妹校となり短期交換留学を実施してのが理由だそうです.


 ブータンの学校文化や生活慣習の特徴として・・・

ブータンの学校では朝,全校で掃除して,その後に全校集会
集中力を高めるために瞑想をし,学校に瞑想室がある.
伝統的な教育の継承と,効果的な学習効果との「せめぎあい」の時期
前世の「カルマ」があるので,障害を持って生まれるという考え
国民総幸福量(GNH: Gross National Happiness)


 「幸せって?」を題材としてグループ討議をおこなって,全体の中で,各自の「幸せ」の発表がありました.もちろん,この問い掛けには正解があるわけではありませんが,渋谷先生は,次のようなブータンでの話をされました.



「・・・あるモデルが,秘境といわれているブータンを取り上げる番組の取材の中で,GNH(国民総幸福量)に絡めて,ブータンの方にインタビューした内容が『あなたにとって幸せとはなんですか?』という問い掛けだったそうです.」

「・・・それに対してインタビューをした相手は『あなたの幸せはなんですか?』と聞き返されたそうです.そのモデルは『自分がモデルとして成功して,有名になることが幸せです』というような答えをしたそうです.」 「・・・それに対して『あなたにとって幸せとは自分のため,自分のことですね』と言われて,そのモデルは言葉を失ったそうです.」


渋谷先生は,この話に続けて,作家・川端康成の言葉を紹介して担当の講習内容は終わりました.川端康成の『掌の小説』に収録されている短編「一人の幸福」の中の一節です.


 一生のうちに一人でも幸福にできれば、それが自分の幸福なのだ。  



 一日目の最後は,選択領域全体をコーディネートしている天野先生がPISA型学力の礎となる概念である"Key Competencies"(キーコンピテンシー)「生き抜くための資質能力」に関して補足がありました.

 コンピテンシーの概念は,「単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力」

 そしてキー・コンピテンシーの定義は,「「キー・コンピテンシー」とは、日常生活のあらゆる場面で必要なコンピテンシーをすべて列挙するのではなく、コンピテンシーの中で、特に、

人生の成功や社会の発展にとって有益,
さまざまな文脈の中でも重要な要求(課題)に対応するために必要、
特定の専門家ではなくすべての個人にとって重要、

  といった性質を持つとして選択されたもの。」  


 天野先生は,「人生の成功」とは「不利益を被らないこと」であり,従来の「基本的人権」にプラスαとして「自己実現ができること」したものが21世紀の「発展的人権」となることであることを付け加えていました.



 選択領域の2日目,午前は「アメリカの教育 〜 組織的な取り組みとしての”スクールワイドPBS”(ポジティヴな行動支援)」 と題して星槎大学教授の三田地真美先生の講習でした.  最初にアイスブレークとして「一分間即興芝居」,十数人ずつのグループ分けだけをして,「台本なし」,「打ち合わせなし」,「指示なし」で,タイトルを示されるとすぐに1分間の即興芝居を演じるというものです.

 次々に1分間ずつの即興芝居ですので,十数分で200人の受講者全体が一通り演じることになります.会場の真ん中辺りから後ろ半分を撮影した様子です.写真左手を舞台と見立てて,次々に移動して即興芝居を演じます.



 桃太郎,浦島太郎,金太郎・・・誰もが知っているような題材です。これは桃太郎が鬼が島で鬼退治をしている場面



お姉さんからいじめられているシンデレラ



 即興芝居が終わって,それぞれが感想や意見を交換する場となったのですが,結構ヒートアップした意見や感想が続きました.

クラスの中でキャラが出来上がっているとやりにくい.
こういう場で,「参加しない」という選択肢もあるべきだ.


 全体のコーディネータである天野先生から「大学で学生に『主体的』な学びをさせる」ということは自己矛盾であり,「仕上げれば,仕上げるほど,遠退いていく『主体性』」という言葉を紹介して,幾つかの話を・・・

経済産業省は「巻き込む力」を言っている.
学校における「自由」とは・・・
権利と義務とは,表裏一体とは言えない。
  (幼児には権利はあっても義務があるとは言えない.)
・西欧における教育は「デモクラシー」と「クリティカルシンキング」のウエイトが大きい.



 その後は天野先生から中国の教育事情に関して,いろいろなトピックが・・


中国は「応試教育」・・・試験に応じるような画一的な詰め込み教育
中国版のゆとり教育である「素質教育」がPISAを意識してはじまっているが,中国では「傾向と対策」で対応して,詰め込み教育の延長線上 ・ペーパーテストの得点が上がっても「資質能力」が上がっているとは言えず,また今の中国の生徒・学生の学力が向上して「幸せ」になったかと言えば…言えない.
中国の教育にはデモクラシー」と「クリティカルシンキング」が抜けている.

中国の教師は,自分のため,目先の結果・利益に飛びついて,その成果で「自分の教員としての成績」を上げている実態

 天野先生の持論が「PISAの向こう側」というフレーズに込められているようです.2本柱が「志」と「翻訳力」だそうです.

 志とは,変化への志であり,翻訳力とは,抽象を具現化する能力・・・大学の教員は「抽象」の中だけが得意で,初等中等教育は,ともすれば「具現」の中だけに留まっているとの見方をされているようです.


 ・・・そしてPBL ( Project Base Learning )です.


育成する「力」として,「生きる力」「PISA型学力」「基礎力」そして「メタファー」としての力.
○ 内容として,・・・資質能力を高めるための「教科教育」「キャリヤ教育」「環境教育」であり,目的のための手段を育成すること
方法(メソッド)として,プロジェクト型学習(PBL)や課題解釈型学習  ・・・ここで休憩となりました.



 全体のコーディネータである天野先生が割り込んできたので,やっと午後の後半に,本来の三田地先生のスクールワイドPBSです.


 最初に提示したのが,「先生はマクドナルドの売り子か?」です.市場(経済)は競争原理が働き,政治(政府)は平等原理が働き,社会(文化)は相互扶助原理が働き,マクドナルドの売り子は市場原理での話であり,学校は相互扶助原理が働く場です.

 市場モデルであるマクドナルドを信託・信頼モデルであり,タッグを組んで取り組むべき医師(医師と患者)や教師(教師と児童・生徒・学生)に当てはめること自体がナンセンスとなります.

 学校における「自由」とは,あるフレームの中での自由であり,時間割や敷地といった「時間」や「場」に制限がかけられている  「フレームの中での自由」には3つのタイプがあり,

線路型(レール)・・・同じ目標に向かって,子どもたちは同じようにレールの上を進む
ガードレール型・・・目標は同じ方向え,でも道の巾が広くて,経路に多様性がある
放牧型・・・柵の中で自由であるが,方向性がない


.  ・・・ガードレールが狭いと線路型に近くなり,広くなると放牧型に近くなる.  PBSとはPositive Behavior Support 〜 ポジティヴな行動支援であり,生徒指導的な側面が強いです.そして学校全体(School Wide)で行うPBSがスクールワイドPBSであり,大学教員がスーパーバイザーとして学校現場へ出掛けることが当たり前になっているそうです.

 

 PBSの特徴として3層モデルが挙げられます.

三角形の底辺(下)から8割・9割のほとんどの部位が「ユニバーサルな指導・介入」
その上の5〜10%がリスクの可能性が考えられる部位「マージナル・予備領域」
頂点の1〜2%が,個別の指導を要する部位 エビデンス・ベースを基本として,データに基づいて「いつ」「どこで」「誰と一緒」「どんな」問題行動をとるか・・・を押さえて,そこから見えてくるものを考えることが大切だそうです.

 

 最後に3日目のメインとなる「指導案づくり」で,「タイトル」と「概要」と「育成する力」を考え,グループの中でロールプレーをすることに・・・


プレゼンテーター 発表
ペアレント ほめる(両親の役割)
コーチ 馬車(引っ張る)・・・質問する(産婆術)
アドバイザー 助言をし,問題点を挙げる

 ・・・2日目が終わりました。



 選択領域の3日目は,各自が考案した指導案のプレゼンテーションが中心でした.  最初にアイスブレーク( ice breakers )で,各自が紙に絵をかくというものです.


  満月か? 三ケ月か? 新月・・・
流れ星 1つ,2つ・・・
 葉がある? 実はある?
 窓はある? ドアはある? 煙突は?
自分 顔だけ? 全体? 上半身? 横顔?
名前 姓だけ? 名だけ?フルネーム?漢字,カタカナ,ひらがな


 三日目はグループ活動が続きました.そして全体のコーディネータの天野先生が三日目の午前は相模原の会場での講習があるので,相模原からのネット越しの参加でした.



その後,大阪・心斎橋の会場と相模原会場との間で質疑・討議があり,午前の講習は終わりました.



午後からは各自の授業案のプレゼンテーションです.「なりきり平家物語」高校の古文の中で実際に古文の内容を演じよう・・・という授業案です.



平家物語の「敦盛の最期」をとりあげて,実際にプレゼンテーションの中で演じることになり,セリフの確認・・・



同じグループで敦盛の最期を演じていました.



次は演劇を用いたコミュニケーション教育で,集団の中で生活する力を身につけることを目標にした指導案でした.



幼稚園児を対象とした「ふれあい」は,入園直後に園児と保護者とのゲームを取り入れた活動です



 最後は,工業高校の先生の指導案で「ものづくり」と「心づくり」で,陶芸の「湯呑み」づくりを通して人づくり・心づくりを目指す指導案でした. *  選択領域の講習の最後の1時間は試験でした.普段は仕事で定期考査の試験を作成して添削・評価をしていますが,試験を受けるのは数年ぶりでした.



 教員免許更新講習の4日目と5日目は,必修領域の12時間を2日間で午前3時間と午後3時間の2日間で講習する形となります.

 *

必修領域1日目の午前は,信州大学の助教で,星槎大学の非常勤講師・林寛平先生でした.佐藤学先生の直弟子で,比較教育学が専門です.実際に世界30か国以上の学校を回っているようです.国際的に学校や教育を比較検討することが研究テーマだそうです.


スクール形式の経緯
   (インドでの生産の担い手の育成,数千規模の一斉授業)
PISAについて,OECDについて,PIAA(成人対象)について
フランスは階級社会なので入試では面接重視(階級を見分ける)
中国は科挙の伝統で筆記試験・・・リスクの高い入試が強み
海外は学校採用がメインだが,日本は教育委員会採用のスタイル
日本は「全人」的な人格形成の教育だったのが,今,崩れつつある.
専門性(個人の資質)と専門職性(専門職全体のレベル)は異なる.
日本は,教師の専門職性が確立しており,海外からは羨ましいレベル
日本では「産業化教育」と「知識教育」が葛藤している過程
変わる学びのスタイル・・『個人の中にあるものを吐き出す学習』
当たり障りのない国際的な話題が「ワイン」から「アニメ,声優」に・・・
反転授業 ・・・ 教え過ぎると,学ばなくなる


 最後に個人的にPISAに関して質問したのですが,切れ味の良いコメントをいただき,20年後の教育界を牽引する研究者のひとりになるのかなあ〜感じました.




 必修領域1日目の午後は星槎大学教授の長井梢先生です.長く小学校に勤務して,その後横浜市の教育委員会に勤務されておられたようです.での勤務経験を活かした講習の展開で,教育政策の動向について,主に学習指導要領の変遷についての話でした.



必修領域2日目,教員免許更新講習の最終日です.毎朝,会場の最寄りのセブンイレブンで缶コーヒーを買って講習前にゆったりと味わっていたのですが,これも今日が最後です.  



 午前は星槎大学講師の白鳥絢也先生です.小学校での勤務経験を活かした講習の展開で,教育政策の動向について,主に学習指導要領の変遷についての話でした.  戦後の学習指導要領の試案が出来上がった経緯から,学習指導要領の改定ごとの変遷,「系統主義」と「経験主義」の間で揺り動く様(さま)をつまびらかに説明して,大きな教育課程変遷の流れをスッキリと説明されていました.



 2日目の午後,最後の講習は,星槎大学準教授の西永堅先生でした.学習障害や発達障害の「支援」(子どもの周りの親や兄弟)を研究されておられ,「子どもの変化についての理解」というテーマでの講習でした.

 学習障害や発達障害に関して,これまでに,しっかりと学んだことがなかったので,ひじょうに勉強になりました.独特のキャラで,惹きつけるようなしゃべり方と興味深い内容に午後の3時間は,あっというまに過ぎてしまったように思います.


「認知」について,感覚と知覚との差異 ・発達とともに感覚は鈍る
     (学習・記憶に依存するようになる)

感覚が鈍感化しないのがLDであり,ADHDともいえる.
学習とは,フレームワークをつくること・・・でもある.



 最後に筆記試験,マークカード方式で25問でした.60点以上が合格です.資料の持ち込み可だったのですが,60分の試験時間のうち50分掛かってしまいました.


  


 全体で5日間,朝から夕方まで缶詰の免許更新講習・・・「通過儀礼」として割り切って受講者も,講習を担当する大学教員も,「義務だから,どうせ受けなければいけないので,それなりに楽しんで受講して下さい」タイプが多いと聞いています。

 5日間の教員免許更新講習を終えて,ふと,ヤマハ・ライト・ミュージック・コンテストでの赤い鳥のステージを見た小田和正のインタビューを思い出しました。

 知名度の低く,歴史も浅い私立大である星槎大学にとって,教員免許更新講習は,大学の「貌」の一部・・・というような重要な位置付けをしているのかもしれません。若い優秀な研究者の最新の研究動向,手慣れたベテランの教員の受講者の心を鷲掴みにするような内容,そして全体をコーディネートして,受講者に対して劇場型で飽きさせないような講習内容の組み合わせも考えられているようで,「良い意味」での「ビジネスモデル」が確立しているなあ〜と感じました。