「学び」から遠ざかっていこうとする子どもたちに対して,
どうすればいいか?
竹の台教育公開授業研究会・竹の台小学校、2015年2月27日
まだ今年度は授業研究会に参加していませんでした。本日,竹の台小学校で公開授業研究会があるので参加しました。この研究会では学習院大学の佐藤先生の講演もあるので,それも参加の目的です。 神戸市営地下鉄で終点の西神中央駅まで。此処は終点なのですが,そのまま車庫への引き込み線が続いているので,終点の駅の「端っこ感」があまり感じられません。 |
「公共交通機関でお越し下さい」との案内がありましたが,グランドが駐車場になっていました。結構遠方からも来ているようで,マイクロバスも1台停まっていました。 |
3年生の社会科と,5年生の国語科の授業が研究協議の対象となる授業です。3年生の社会科は,指導助言が佐藤学先生で,研究協議が体育館となっています。おそらく凄い数の参加者になりそうで,5年生の国語科の授業に参加しました。 5年生国語「わらぐつの中の神様」 授業の課題「聴き合う関係づくりを目指して」 教材は,杉みき子作「わらぐつの中の神様」です.主人公のマサエがおばあちゃんとコタツに入っているシーンではじまります。お父さんは今晩はとまり番で不在,おじいちゃんは銭湯へ出掛けて,お母さんは台所で夕食の後片付けをしています. マサエが,お母さんに「明日,学校でスキーの日だけど,スキー靴は乾いている?」と問いかけて,今日友だちと夕方まで近所でスキーをしていたので,確認すると,まだスキー靴が濡れていました.おばあちゃんが「わらぐつを履いていきなさい.暖かいよ」と口を出すとマサエは「わらぐつなんて,みっともないよ」,それに対しておばあちゃんは「わらぐつは暖かいし,軽いし,わらぐつの中には神様がいなさる.」 そして,おばあちゃんが「それじゃあ,ひとつ,わらぐつの話をしてやるかね.・・・」と,わらぐつの中の神様の話を始めた・・・というストーリーです. * 本来は13:20〜14:05までの45分授業ですが,音読に時間がかかるので,実際の授業は13:00からの実質65分授業でした. 13:00から13:25ぐらいまで,子どもたちはそれぞれじっくりと音読をしていました.13:20頃には,早い子どもたちは音読が終わっていましたが,他の子どもの音読に静かに聴き入っていました. 授業者の教師は,音読が遅い子どもを急かすことなく,暖かい眼差しで見守っていました.子どもの音読の声が二〜三人となり,そして最後の一人になって・・・子どもたちも授業研究見学の数十人の見学者が,その最後の一人の音読に聴き入って,最後の段落を読み終えると,授業者の教師が,はじめて声を発しました. 全体の音読の後の,次の子どもたちへの指示は・・・本時の学習場面の箇所の音読で,今度は2人でペアになって段落ごとに交代で音読,これも授業者の教師は,最後のペアが読み終わるまで暖かく見守っていました. ペアの音読が終わると,3〜4人のグループで,感じたことや読み描いたことを聴き合う時間を設けて,その後にクラス全体え聴き合う場を設けていました・ 何人かの子どもたちが,それぞれ読み描いたこと・感じたことを全体の前でしゃべる中で,文章の違う箇所を挙げながらも,別の子どもと同じような感想を口にした子がいました.授業者の教師は,その感想をこぼすことはせず,しっかりと拾って,みんなに,その箇所を音読させて,その個所に関してグループで話し合わせました. * おばあちゃんのわらぐつの話の中で,おみつさんという女の人が,市の日に野菜と一緒に自分で編んだ出来の悪いわらぐつを,決まって買ってくれる若い大工さんとのやり取りの部分です. 私の目の前の女の子が,何か言いたいことがありそうで,先生を凝視して挙手する準備をしていました.グループでの話し合いを終えて授業者の教師が「何か感じたことがありますか?」と言った瞬間に,その女の子は勢い良く挙手しました. 授業者の教師も察していたようで,すぐにその女の子を指名しました.「大工さんは,おみつさんを狙っていたのだと思います.」この感想に,子どもたちはちょっととどよめいて,それからはみんなが挙手していろいろな感想が出てきました.まさに「聴き合う関係づくり」のトリガーを教師が導いたなあと感じました. * 授業が終わって研究協議となり,まず会場校の教師が,それぞれが感じたことを発言するスタイルでした. |
子どもたちの名前を挙げて,子どもたちの「学び」に関して詳細に出し合っていましたが,授業者の「教え」に言及する意見が皆無でした. 授業を参観して,授業者のアシストの上手さが際立って,それ故に子どもたちが輝いていたように感じたのですが,それは「当たり前」のことなのか,それとも学びの共同体を標榜する研究協議においては,「教え」に言及することはご法度なのか・・・ちょっと研究協議の内容がにバイアスを感じてしまいました. 指導助言の担当者も,そのバイアスを強調するだけでしたので,そういうタイプの授業研究会なのかもしれません. * 研究協議が終わって,佐藤学先生の講演会場である体育館に向かいましたが,まだ研究協議が続いています。体育館の前半分を使った大人数の研究協議です。 |
研究協議の最後で,佐藤学先生の指導助言・・・あまり時間を気にせずに助言を続けているようです。 |
途中からなので,指導内容はあまり理解できませんが,どちらかと言うと,指導助言の最後に,教育現場での一般論を付け加えているような内容でした。 |
佐藤学先生の講演のタイトルは「子どもの学び,教師の学び −学びの共同体学校改革 −」です。 |
講演を聞いたメモ・・・箇条書きです。 ・「子どもを見る」ことが大切.子どもの個人名が出ない授業の研究協議は「教え」の方法や解釈ばかりになっている ・「読み」に関して,何も考えていない教師は,子どもが文章から内容をイメージせず,何も考えずにスラスラ速く読めることを「速くスラスラ読めて良かったね.」と言ってしまっている. ・子どもたち,ひとりひとりの学びを保証することが大切 〜〜 PISAテストの言及がありました。 ・PISAテストの基本はランダムサンプリングで,義務教育の最終学年(15歳)の7月に実施 中国では,ランダムサンプリングではなくて,どうも重点校で実施している 日本では,新学期の時期の関係で高校1年生で実施 ヨーロッパでは移民が増加して,相対的な順位が低下 中国は,日本よりカリキュラムが数年進んでいる. 〜〜 そして「学び」に関する内容です。 ・文学はテキストと向かい合うことが大切で,何度も何度も読むことが大切.「ことば」をしっかり. ・数学では補助線を引くことが,何がポイントであるか・・・が顕れる. ・「学び」と「稽古」とは違う.稽古は一人ですでに学んだことを反復できるが,一人では学びはできない. ・教科書レベルと学力は,強い相関がある. ・学力を伸ばす要因として,補習等々あるが,実際に有意な効果があるものはない. 但し,宿題に関しては日常生活の中での学習となって,「効果の傾向」がある. ・教育レベル(生徒の学力)を上げるためには 1.教師の学力・レベル(教科書の背後にあるもの) 2.教師の経験年数 3.非正規採用教員の比率 4.授業のやり方 5.生徒の意欲 ・秋田は,地元志向が強く,東京の大学より秋田大学を志望する傾向,就職先も地元志向で,公立学校教員採用試験の倍率が高い.教師の質が高い. 秋田は小学校では学力が高い.教師の力で引き上げている.中学・高校になると逆転現象 〜〜 高校に関する「学び」についても・・・ ・中学・高校では,授業中に「潰れている生徒」が問題である. タイプ・・・黙って座って,ノートだけとっている.(学ぶことを)あきらめている. 伏している.寝ている. 教師に対する反抗(?) ○特徴として,ノートだけはきれい.でも,何もわかっていない. ○高校になると,ノートをきれいにとっている場合ではない.授業内容としっかりと向き合い考えることが大切である. ○つながり(生徒ー生徒,生徒ー教師がなくなっている. no communication ○東京と大阪(大都市圏)では,教師の質が低い.大阪は手を抜いて質が悪いのに対して,東京はまじめにやって質が悪い. ○「何を学ぶか」「どう学ぶか」を教師がわかっていない. 〜〜 最後に,印象に残ったフレーズ ・「学び」から遠ざかっていこうとする子どもたちに対して,どうすればいいか? 佐藤学先生の,この言葉に関する話に,かなり共感しました。 |