±ART2014 旧木下邸


現代アートと近代和風住宅 in舞子、2014年03月20日


 JR神戸線・舞子駅は,通学で3年あまりの間,毎日のように利用したことがある駅ですが,今・現在は乗り降りすることが稀で,時折この駅に降り立つと・・・懐かしい気分になります。

 兵庫県立舞子公園内に,昭和16年に竣工した古い民家・旧木下邸があり,一般に公開されています。徒歩圏内ですが,まだ訪れたことがありませんでした。職場の同僚が,旧木下邸での展覧会で作品を展示するとのことで,初めて旧木下邸を訪れるために舞子駅に降り立ちました。


 舞子駅の東側には,ここ舞子と明石海峡を隔てた対岸んの淡路島との間の架け橋・明石海峡大橋のバスストップがあり,長いエスカレータを上ると淡路島や,四国へ向かう高速バスに乗ることができます。


 明石海峡大橋の北詰・本州側に舞子公園が広がっています。


 舞子公園の一角に旧木下邸があります。


 入口には,±ART2014の案内掲示板が置かれていました。


 木戸です。この階段の上のちょっと小高い高台に旧木下邸があります。


 振り返ると・・・住宅の屋根越しに明石海峡大橋の本州側の主塔が真正面に見えます。


 ゆったりカーブを描いた階段を上ります。この左手が前庭となっています。


 前庭(南側)から旧・木下邸の眺めです。写真の右側に洋室があり,正面には表座敷があり,写真の左側が書院となっています。


 表玄関です。此処が入口です。


 3畳の玄関先の小部屋に机を置いて,受付にしています。


受付には,青山大介さんの鳥瞰図「港町神戸」が飾っていました。


表玄関の北には,浴室,台所,内玄関があります。此処は浴室に隣接する部屋・・・着替え用のスペースだったのかもしれません。


 浴室です。平成12年までは木下邸として使われていたようで,シャワーも備え付けられています。


 中庭に面する四畳半の部屋には,いしかわゆかさんの作品「Air Dance」がありました。

『ひんやりとして 少しの湿度を含んだ空気
 ゆるやかな流れ そこに確かに存在し続けたもの
 旧木下家住宅の佇まいから感じる年月の重なりを可視化しました。』
       作品紹介の文より


 その4畳半の部屋の中庭に面した処には,いしかわゆかさんの作品「Translucent Air 」がありました。

『もしかしたら,今あなたが目にしているものは
 あなたにしか見えていないかもしもしれない。

 今あなたに見えていないものが,
 他の誰かには見えているかもしれない。

 「半透明な空気」は,はたしてどちらなのだろう。』
         作品紹介の文より


 中庭に面した縁側です。


中庭に面した縁側の南には,表座敷があり,その南には広縁越しに前庭が望めます。


床の間の掛け軸には,鳥瞰図・・・


 此処,旧木下邸の鳥瞰図・・・青山大介さんの作品です。


 その横には,昨年まで元町商店街にあった老舗の書店・海文堂の鳥瞰図です。青山大介さんの作品です。


 表座敷の違い棚には,震災前の阪急三宮駅の鳥瞰図,青山大介さんの作品です。


 表座敷に隣接する広縁に面した中室です。


新山浩さんの作品「早来迎」です。広縁越しの春の陽光を浴びていました。


 『知恩院(京都)の国宝 早来迎図に描かれている雲を彫刻として立体化した作品です。早来迎図は往生者(おうじょうしゃ)を迎えるため,阿弥陀如来と二十五菩薩が急峻な山頂ごしに飛雲に乗って降下するさまを描いたものです。
 仏の乗っている躍動感あふれる雲は仏達の[乗り物]であり
「この世」と「あの世」を行き来するための[システム]でもあります。
システムは人々に幸せと平安をもたらしますが,乗り手が「何者か」によっては,その反対も在り得る,ということです。』
        作品紹介の文より


 広縁から眺めた前庭には谷口和正さんの作品「RE:BIRTH09」です。


『廃材となっていた鉄板や鉄板の破片,未使用の鉄文字等を使って再構成を始めたシリーズ。
CD-R記録・記憶される装置(種子のようなものとも感じている)作品で使われているCD-Rには文字データ,本作品を作る時に使ったデータを焼き込んである。
元は文字や音楽,画像などのデータを記録・記憶させるための物であるCD,そこに記録されたことばたちが再生(RE:BIRTH)され,生き物のように命を宿し,大きなうねりとなって目の前に顕れる様を具現化させられたらと思う。
ぴかぴかに生まれてはやがて錆び朽ち果ててゆく,その繰り返し,
「輪廻」というイメージも,制作の際に常に意識下にあるように思う。

この作品の素材である3.2mmの鉄板は以前個展を開催したギャラリーで床材として使われていた鉄板を譲り受け,作品としてRE:BIRTHさせたもの』
       作品紹介の文より


 前庭沿いの広縁の東の端は,洋風の応接間となっています。


 広縁には,洗い場のような処がありました。


 前庭沿いの広縁の西の端は,書院です。ここには谷口和正さんの作品「after the rain #03」があります。


 洋風の応接室からの前庭の眺めも良いですが,書院の座敷からの前庭の眺めも趣があります。


 書院の軒下を広縁から眺めた光景です。


 書院の北に隣接する西室には,此処・旧木下家住宅 建築模型の図面とヒノキの材料が置いていました。縮尺50分の1で,3月21日〜23日の3日間,建築を学んでいる学生達によって制作が進められるそうです。


 茶室に向かう廊下沿いのトイレ・・・なんとなくモダンな雰囲気が漂っています。


 トイレ脇の手洗い場です。


 レトロな感じが漂うタイル張り・・・


 茶室の待合室には,新山浩さんの作品「山」があります。

『仏画の伝統的なモチーフである山の構図です。多くの場合,中央の大きな山は如来,両端の小さな山は菩薩の隠喩でもあります。
しかしながら,たとえ,そのような知識がなくとも「何か得体の知れない存在」を感じさせる,不思議な構図であることは間違いありません。』
       作品紹介の文より


 中庭沿いの縁側越しの茶室,旧木下邸の西の北隅に位置します。写真左側が「山」がある茶室の待合室です。


 待合室から,茶室に向かう廊下を進むと・・・茶室が青白い光で溢れています。


谷口和正さんの作品「When you are the only one #02」と,「moonlight/shadow」です。


 狭い茶室が,LEDの青白い光で溢れ,作品の文字が影となって・・・


『「月」をタイトルや歌詞の中に持つ歌を素材に
コトバにより構成された「月」を作ります。
fragileなものとしての月,儚さ,不死。
月の満ち欠けを錆びで表現し,錆びている部分が欠けを表わしています。
作品本体の文字を反転させているため,床や壁面に投影させる影が読める文字として映し出されます。』
   「When you are the only one #02」の作品の紹介


『完璧さより,少し何かが足りていない不完全さ,未完成さに美しさを感じることがある。そして,硬く,強いとイメージされる鉄(軟鉄)は,意外にも柔軟で錆びやすく,もろい。
今回,既存の作品(鉄の球体)が落とす影をトレースして形を再度,立体化させることで,新たな意味を見いだすことを試みた。』
     「moonlight/shadow」の作品の紹介


 茶室は,席亭がお茶でもてなし,茶道具や,食事,言葉を介した会話が共鳴する場ですが・・・


・・・この日の茶室は,光と影,文字を介したコトバで満ち溢れていました。


 障子,天井,壁・・・光と陰で浮き彫りになるコトバ


 光の線のコントラスト

 LEDの高い色温度で満ちた茶室の中からは,入口の外側の電球で照らされた低い色温度の廊下が,赤っぽく感じます。


 月明かりで満ち溢れた茶室から,電灯で照らされた世俗の世界・廊下へ出てきました。